[:ja]
はじめに
こんにちは。トランジェンのHです。ここではトランジェンが持つ技術的な情報を掲載します。前回、前々回はタグを保護する「タグ化」の基礎的な事実についてお伝えしました。今回はTradosで重要な問題の原因となるかもしれない翻訳対象外タグの仕様についてお伝えします。翻訳対象外機能を頻繁に使用する方は是非お読みください。
サンプル
今回のサンプルは上記画像の文章を使います。上記のサンプルはXMLファイルです。1番と2番に違いはありません。同一文章です。
今回取り上げるTradosのタグの問題は「翻訳対象外とされたタグが翻訳メモリーと異なる場合、翻訳メモリーのID番号通りの順番で訳文に反映されない」というものです。この問題はTradosのバージョンによっては解決済みです。最新版の2014では一部を除いて解決していますし、旧バージョンである2007では一切問題が起こりません。2011ではこの問題が起きることを確認しています。
今までの連載の説明では、この問題自体が一体何を意味しているのか理解できないかもしれませんが、この記事を読めば分かるようにしていますので安心してください。
Trados2007の場合
画像は2007でサンプルのXMLファイルを開いたところです。サンプルの文章に次の日本語訳をいれました。
原文:
Install <strong>AAA</strong> that is pre-installed in your <strong>BBB</strong> memory.
訳文:
あなたの<strong>BBB</strong>メモリにプリインストールされている<strong>AAA</strong>をインストールしてください。
訳文では、strongタグ内の「文」が入れ替わっているところに注意してください。原文と訳文で単語の順番が入れ替わるのは非常にポピュラーな現象です。この翻訳を確定し、翻訳メモリーに書き込みます。翻訳メモリーとは原文と訳文の組み合わせを補完するメモリーで、以後同一の文章や、それに似た文章があった場合に、以前訳した翻訳資産を活用するTradosの基本的な機能の一つです。
この時わたしたちが行う操作は2番目の原文をクリックして[Open]コマンドを実行するだけです。こうすることで翻訳メモリーから以前の翻訳が取り出され、訳文にメモリーの内容が反映されます。1番目の通り、「タグの順番が原文と訳文で入れ替わっている」点に注目してください。もし入れ替わっていないと文章の意味が通らなくなってしまうでしょう。
今回の問題はここです。「翻訳メモリーにある順番が反映されない」のです。では問題のあるTrados2011を見てみましょう。
Trados2011の場合
Trados2007と同じように訳文を入力しました。ここでCtrl+Enterキーを押して、訳文を確定します。
2番目を見てください。Trados2007とは異なり訳文のstrongタグの順番が原文の通りになっています。1番で確定した順番とは異なっています。さらにマッチ率(翻訳メモリー中の原文と、実際に翻訳対象になっている原文との一致率を表した数)が100%になっています。これが大きな問題で、翻訳者は1番目で確定した訳文が自動的に確定される上に、マッチ率が100%であるため「タグの順番が違う」ということに気がつき難くなっているのです。やっかいなことに翻訳メモリー上では入れ替わって表示されています。

Trados2011での対応
2011でできる対応はテキストが置換された場合にペナルティを課すことです。

「テキスト置換によるペナルティ」に値を上げることで100%の判定ではなくなります。
100%ではなく99%になりました。しかしこれではタグがあった場合全てに対してペナルティが課され100%ではなくなってしまいます。Tradosの翻訳メモリーを使用した翻訳資産の活用という利点のかなりの部分が生きなくなってしまいます。
Trados2014の場合
Trados2014ではこの問題は解決しています。Tradosユーザーは2014にアップグレードしましょう。
次回はこの問題について私が調査した限りの原因と思われることについてと、ペナルティ以外の対処方についてお伝えします。しかしながらその対処方も2014を使用する利点を上回れません。
次回はさらにTradosの仕様に踏み込んだ記事となります。それではまた。[:en]
はじめに
こんにちは。トランジェンのHです。ここではトランジェンが持つ技術的な情報を掲載します。前回、前々回はタグを保護する「タグ化」の基礎的な事実についてお伝えしました。今回はTradosで重要な問題の原因となるかもしれない翻訳対象外タグの仕様についてお伝えします。翻訳対象外機能を頻繁に使用する方は是非お読みください。
サンプル
今回のサンプルは上記画像の文章を使います。上記のサンプルはXMLファイルです。1番と2番に違いはありません。同一文章です。
今回取り上げるTradosのタグの問題は「翻訳対象外とされたタグが翻訳メモリーと異なる場合、翻訳メモリーのID番号通りの順番で訳文に反映されない」というものです。この問題はTradosのバージョンによっては解決済みです。最新版の2014では一部を除いて解決していますし、旧バージョンである2007では一切問題が起こりません。2011ではこの問題が起きることを確認しています。
今までの連載の説明では、この問題自体が一体何を意味しているのか理解できないかもしれませんが、この記事を読めば分かるようにしていますので安心してください。
Trados2007の場合
画像は2007でサンプルのXMLファイルを開いたところです。サンプルの文章に次の日本語訳をいれました。
原文:
Install AAA that is pre-installed in your BBB memory.
訳文:
あなたのBBBメモリにプリインストールされているAAAをインストールしてください。
訳文では、strongタグ内の「文」が入れ替わっているところに注意してください。原文と訳文で単語の順番が入れ替わるのは非常にポピュラーな現象です。この翻訳を確定し、翻訳メモリーに書き込みます。翻訳メモリーとは原文と訳文の組み合わせを補完するメモリーで、以後同一の文章や、それに似た文章があった場合に、以前訳した翻訳資産を活用するTradosの基本的な機能の一つです。
この時わたしたちが行う操作は2番目の原文をクリックして[Open]コマンドを実行するだけです。こうすることで翻訳メモリーから以前の翻訳が取り出され、訳文にメモリーの内容が反映されます。1番目の通り、「タグの順番が原文と訳文で入れ替わっている」点に注目してください。もし入れ替わっていないと文章の意味が通らなくなってしまうでしょう。
今回の問題はここです。「翻訳メモリーにある順番が反映されない」のです。では問題のあるTrados2011を見てみましょう。
Trados2011の場合
Trados2007と同じように訳文を入力しました。ここでCtrl+Enterキーを押して、訳文を確定します。
2番目を見てください。Trados2007とは異なり訳文のstrongタグの順番が原文の通りになっています。1番で確定した順番とは異なっています。さらにマッチ率(翻訳メモリー中の原文と、実際に翻訳対象になっている原文との一致率を表した数)が100%になっています。これが大きな問題で、翻訳者は1番目で確定した訳文が自動的に確定される上に、マッチ率が100%であるため「タグの順番が違う」ということに気がつき難くなっているのです。やっかいなことに翻訳メモリー上では入れ替わって表示されています。

Trados2011での対応
2011でできる対応はテキストが置換された場合にペナルティを課すことです。

「テキスト置換によるペナルティ」に値を上げることで100%の判定ではなくなります。
100%ではなく99%になりました。しかしこれではタグがあった場合全てに対してペナルティが課され100%ではなくなってしまいます。Tradosの翻訳メモリーを使用した翻訳資産の活用という利点のかなりの部分が生きなくなってしまいます。
Trados2014の場合
Trados2014ではこの問題は解決しています。Tradosユーザーは2014にアップグレードしましょう。
次回はこの問題について私が調査した限りの原因と思われることについてと、ペナルティ以外の対処方についてお伝えします。しかしながらその対処方も2014を使用する利点を上回れません。
次回はさらにTradosの仕様に踏み込んだ記事となります。それではまた。